事務所だより

HOME > 事務所だより

働き方改革法案が成立しました③

2018.09.01

 先月に引き続き「同一労働同一賃金」から。
 最近、大企業を中心に、年功給や職能給などの人基準の給与から職務給や役割給などの仕事の基準の給与に転換する動きが加速しています。非正規労働者と正規労働者の仕事を比較して、同一の仕事であれば同一の賃金を会社は支払う義務が出てきますので、給与体系を仕事基準に見直す必要があります。すると正規社員の給与も仕事基準にしますので、これまで長く勤めてきたからとか、一流大卒だからとか、50代であろうが20代であろうが関係なく、同じ仕事をしていれば同じ給与になっていきます。おそらく世の中みんな大反対でしょう。
 また多くの日本企業は頻繁に配置転換や転勤を行いますので、仕事も頻繁に変わります。すると仕事が変わると給与が下がることもあり得ますので企業も簡単には配転命令もできなくなります。
 とはいえ管理職が4割以上もいたり、社員の平均年齢が40歳代中盤といった高齢化している多くの企業は、「若い人はいつまでもこの方々の下支えをしてください」ということもできません。若いうちに辛抱すれば将来給与が上がるよと言っても、今は通じなくなっています。今後は脱年功給、脱職能給の方向に向かっていくと思います。働く人は組織のためではなく、個人のためのキャリアをどう身につけていくかの時代になりそうです。

働き方改革法案が成立しました②

2018.08.01

 6月29日働き方改革法案が成立しました。
 今後の影響を考えました。引き続き「同一労働同一賃金」から。通勤手当、皆勤手当、食事手当や住宅手当などの職務に関係のない手当などは、これまで正規社員にのみ支給し、非正規社員には支給していない企業が多くありました。既に同一労働同一賃金ガイドライン案や数々の判例では、これを否定しています。今後、職務に関係のない手当は、正規社員にのみ支給するといったことは難しくなります。
 しかし企業側が、これらの手当を非正規社員にも支給すると人件費コストは急増します。パートタイマーを多く抱える小売・外食産業は厳しくなります。また逆にこれらの手当を廃止しようとすると、正規社員から反対され同意を得ることは難しいと思われます。
 賞与についても、非正規社員には支給しないといったことは難しく、ある程度の賞与の支給は避けられないでしょう。
 今後企業の賃金原資の配分を考えた場合、職務に関係のない手当を廃止し、人事制度や賃金制度全体を見直していかなければならなくなりそうです。

働き方改革法案が成立しました

2018.07.01

 6月29日働き方改革法案が成立し、労働基準法や労働契約法など8本の法律が一括改正されます。今後どのようなことが現場で起きるのかを予想してみました。

 「同一労働同一賃金」の影響。フルパートタイマーから、「今年入社した新入社員のAさんは、私よりも仕事が全くできないのに基本給は私よりも相当多くもらっています。しかもそのAさんに私が仕事を教えています。どうしてなのか教えてください」と言われたらどうしますか。これまで会社側は、「それはそうでしょう。あなたはパート、Aさんは正社員だからです。」と説明しています。今後、職務内容、職務・配置の変更、その他の事情をもって説明できないとアウトになります。単にパートタイマーと正社員のいわば「身分」の違いでは説明したことにはなりません。

 「Aさんは、正社員で全国転勤もあり、職種も特に限定していません。また新卒者として期待もあり、また今後転勤、職種変換等の負担も考慮した待遇としています。あなたと単純には比較できません。ご理解ください。」といった説明をする必要があります。

定年再雇用後の給与の引き下げを最高裁は容認

2018.06.01

 定年退職後に嘱託社員となった運転手が、定年前と同じ仕事をしているのに給与が下がるのは違法だとして、定年前と同じ給与を支払うよう勤務先の運送会社の長澤運輸(横浜市)に求めた訴訟の最高裁判決が出ました。最高裁は、長期雇用を前提とした正社員と定年後再雇用の嘱託社員とでは賃金体系が異なることを重視し、定年後、同一労働でも給与や手当の一部、賞与を支給しないのは「不合理ではない」としました。再雇用者の賃金を引き下げている多くの企業にとっては、胸を撫で下ろす結果となったのではないでしょうか。
 ただ、休日を除く全ての日に出勤した者に支払われる精勤手当については、嘱託社員に支給しないのは「不合理である」としています。
 労働契約法第20条では、正社員と非正規社員の待遇差について「不合理」なものであってはならないとしています。今回の事案では、定年前の正社員と定年後再雇用の嘱託社員について、労働契約法第20条の適用が問題となっています。判決では、法は完全な均等処遇(同じ待遇にせよ)まで求めているわけではなく、バランスを考慮して不合理でない均衡処遇を求めており、不合理かどうかは企業の個別賃金項目で検討すべきだとしました。
 今後、企業は非正規社員の待遇が不合理であると判断されないよう、労働条件ごとに検証精査することが求められます。

同一労働同一賃金が実現されます。

2018.05.01

 同一労働同一賃金を目指した法案が秒読みです。なぜ今、同一労働同一賃金は必要なのでしょうか。バブル崩壊後、低賃金な非正規労働者が、労働者全体の4割にまでなり、これにより少子化、その後の消費の低迷につなり日本全体の経済がなかなか上向きになりません。非正規労働者の賃金を上げ、消費活動を活発化させ景気の底上げをするために、企業に同一労働同一賃金を求めている結果なのです。つまり労働政策ではなく、経済政策が背景にあります。
 この法案が施行されると企業への影響は次のようなものが出てきます。①パートだからといって同じ仕事をしている正社員よりも引く賃金で対応することが難しくなる。②従来、経験、能力、年功といった人によって決めていた賃金は、仕事の質、内容によって決める仕組みになる。③通勤手当、賞与、退職金とは、雇用形態、身分の差によって支給の有無を決めることができない。④ひとたび非正規労働者から、正規労働者との待遇差を不合理な取扱いであると言われると、企業側は「説明」する責任しなければならない義務を負う。
 それでなくても中小企業では、人手不足の中、賃金コスト上昇に悩んでいる中、新たな問題が出てきます。

就業規則見直しのポイント②

2018.04.01

 就業規則を見直しする際、前号に引き続き最近の気になる見直しのポイントについて述べます。
●私傷病休職について(その二)
 私傷病休職で一番トラブルの多い場面は職場復帰のときです。職場復帰の条件を特段明記せず曖昧にしていると、決まって労使トラブルとなります。規則には、①「休職前に行っていた通常の業務を遂行することができる程度に回復した状態」であること、②具体的に復帰可能な状態を列挙しておくことが必要です。
 残念ながら休職期限に回復せず、職場復帰出来できないときは、「退職」の規定により休職期間満了で退職となります。よく休職期限に職場復帰できないときは「解雇する」と記載された規則もありますが、会社からの一方的な解雇ではなく、労務不能による退職(自然退職)をお勧めします。
 なお職場復帰できる、できないでトラブルになったときは、精神疾患になった原因は職場(会社)にあり、これは労災だと主張されるときもあります。労災認定は国が行いますので、国の判断に任せるしかないのですが、労災認定されると退職のハードルは高くなり、解雇の問題につながります。そのため労災認定の要因となる職場の過重労働や各種ハラスメント等は避けるべきです。

就業規則見直しのポイント①

2018.03.01

 この時期、就業規則の見直しをする企業さんが多くご相談に来られます。最近の気になる見直しのポイントについて述べます。
●私傷病休職について(その一)
 多くの会社で「3か月以上欠勤が続いたとき」休職を命ずるといった規定になっています。しかし精神疾患は、断続的に欠勤することが多いため、「日常業務に支障きたす程度(概ね2週間程度)欠勤が続くと認められる場合」は休職を命じ、治療に専念させた方が適切です。
 一旦復職した後でも、しばらくして再度同一若しくは類似した疾病で休職を繰返す場合があるため、一定の期間内の再発であれば休職期間を通算する規定が必要となります。
 会社が職場復帰は難しいと判断しても、主治医等による「就労可能」とする診断書を提出して復職を訴えてくる場合があります。職場復帰できる場合とは、単に会社に来て軽作業はできるという意味ではありません。「休職前に行っていた通常の業務を遂行することができる程度に回復した状態」であると明確に定義する必要があります。その判断は会社の指定医(産業医)の診断書をもとにして「会社が判断する」と記載してください。

長時間労働の原因は何?

2018.02.01

 長時間労働が慢性化している企業にとって今「働き方改革」は緊急の課題となっています。厚労省では改善の取組み事例を公表しています。その中の一部を紹介します。

①意識に問題あり:トップ、管理職、一般社員の意識を細かく分けて、それぞれの対策を立てます。経営トップが長時間労働を是としている。管理職が忙しいと言って長時間労働の削減意識が低い。一般社員で仕事が趣味になってしまっている。それらの各層に対して具体的な対応をはかります。

②マネジメントに問題あり:上司の考え次第で部下の働き方や休みの取り方が左右され、マネジメントの標準化がされていない。管理職への人材育成やマネジメント力向上研修を行う必要があります。

③仕事特性、仕事のやり方に難あり:品質を過剰に追及する、社内向けの説明資料に必要以上に高いものを作成している、のであれば、資料内容の簡素化・標準化等の対策が必要です。また特定の部署・社員に仕事が集中しているのであれば、仕事の棚卸しをして各人の業務負荷を見える化をして調整します。

 厚労省のサイト「働き方・休み方改善取組事例集」に多くの事例がありますのでご参考ください。

時間外労働の上限100時間の根拠って何?

2018.01.01

 平成30年は労働基準法など働き方改革関連法案の成立が予想されます。最も注目すべきなのは、時間外労働(残業)の上限規制です。これまで実質無制限であった時間外労働は、特別の事情があるときでも、①年間720時間以下、②1ヶ月最大100時間未満、③直近2~6ヶ月の各平均80時間以下(②③か休日労働を含む)を上限とし、罰則も設けられます。

 ではこの100時間、80時間の根拠はどこにあるのでしょうか。働く人の生活時間を考えると、1日24時間から労働時間8時間、昼休み1時間、通勤1時間、食事・風呂・団らん等4時間の14時間を差し引くと残り10時間となります。この10時間は睡眠時間と残業時間に使われます。通常、睡眠時間を8~7時間とれると医師等による疫学調査から、脳・心臓疾患発症リスクがほとんどないということが分かっています。ところが睡眠時間が5時間では、この発症リスクがあり、6時間でもありの報告が出ています。残業を5時間すると睡眠時間は5時間しかとれず危険となります。1日の残業5時間を月に換算する100時間、残業時間4時間で月80時間となります。時間外労働が多すぎると睡眠がとれず健康障害を引き起こすことが根拠となっているのです。

来年の無期転換社員への対応について

2017.12.01

 いよいよ来年の4月から無期転換社員が発生しますが、会社の対応策をまとめると次のようになります。

 ①無期転換を発生させたくないので、5年を超えて雇用契約を更新しないという合意を労働者とかわす。しかし、単に無期転換権を付与したくないので更新しないという理由では法的なリスクがありますので慎重に対応すべきです。

②無期転換を認め、次の3つの手段をとる。

 ア)とりあえず無期転換社員にする。雇用期間以外の契約内容はそのまま維持できますのでこの方法をとる企業が大部分です。なお、就業規則等で定年の定めを規定してください。イ)地域や職種、短時間に限定した多様な正社員制度を導入する。いきなり有期労働者を正社員に登用にすることに抵抗のある会社であれば有効です。しかし人件費が増加します。ウ)正社員に登用する。有能な人材を正社員化することですが、これも人件費が増加します。エ)だまって従来の有期雇用を更新し続ける。予期せぬ無期転換権行使に備えた対応は必要です。

 今後こういった無期転換権については労働者も高い関心をもって企業に臨んできます。また企業側でも人手不足の中、人材確保といった面からも、早急な対応が望まれます。

次へ »